【連載】今夜は、ほろ苦いカフェオレと。 ―第2回―「無理しないで『食べる』ということ」

【連載】今夜は、ほろ苦いカフェオレと。 ―第2回―「無理しないで『食べる』ということ」

2020年2月29日
ナカセコ エミコ

第2回 「無理しないで『食べる』ということ」 毎日頑張って働いているけれど、これで本当に良いのだろうかと迷ったり苦しくなったり。どんな人にも、そんな夜があるものです。 ほろ苦いカフェオレを淹れたら、心を少し緩めてみて。あなたらしい明日を迎えるために、今夜はちょっと立ち止まってみませんか? 書評家・絵本作家のナカセコエミコがお送りする、眠れない夜に読みたいエッセイです。


寒暖差がまだまだ激しい季節、体調を崩しやすい気候が続いていますね。

今回のテーマは、「食べる」ことについてです。繁忙期はつい適当な食事にしてしまったり、ストレス発散でジャンクなものを食べ過ぎてしまったりすることもありますよね。

そこで、働く女性の食事事情や、「食べる」ことの大切さについて少しお話してみたいと思います。

■食べ損ねた昼食の代償

かつて、私が会社員だったころの話。当時、中間管理職だった私の仕事には、部下の商談に同席するというものがありました。部署の特性として、多くの下請け業者さんとの打ち合わせが必要だったため、自分の担当だけではなく、部下数人の商談にも立ち会っていたのです。

その隙間には、社内のさまざまな会議が入ってきて。朝9時から18時まで、ほぼ1時間刻みで商談や会議が目白押し。12時から13時のランチタイムにスケジュールを入れられることはありませんでしたが、前の商談が押してしまったり。ちょっとした時間のズレが影響して、昼食を食べ損ねることはよくあることでした。

ある頃から、脇腹がジンジンと痛くなり、赤く腫れ上がってきました。多忙が積み重なって、私は慢性的な帯状疱疹を発症してしまったのです。

■すぐに食べられるものがある安心感

まずは、食べ損ねがちな昼食事情の改善に着手。具体的には、スープジャーを活用することにしました。

カット野菜や、豆・コーンの缶詰めをネットスーパーで大量購入。大鍋に材料を組み合わせて、数日おきにいろいろなスープを作りました。休日には大量の玄米を炊いて、全部おにぎりにして冷凍。手間ひまをかけず、パッと食べられる温かい昼食を死守することにしました。 すぐ食べられるものがそばにある安心感は、想像以上に大きいものでした。時間がなくても、スープだったらするするとお腹に入ります。気がつくと、帯状疱疹はすっかり影を潜めていました。

今だったら、仕事の仕組みそのものにアプローチしていたかもしれません。それでも、生きるうえで、一つの知恵を得ることができたように思うのです。それは、シンプルな話。「食べる」ことは大事であるということ。

■頑張りすぎずに「食べる」

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食べることは大事なこと。ほんとうはとてもシンプルな話。

毎日ではないけれど、スーパーのお惣菜やデパ地下のデリを、閉店間近に安く購入して、夕食と翌日のお弁当にうまく振り分けているという友人がいます。

逆に、おかずはワンパターン化。彩りなんて気にしないで、お弁当箱にただ詰める。無理しない自炊を継続している人も多くいます。

ひところよくいわれた、一汁一菜という考え方も侮れません。ご飯とお味噌汁と、ちょっとした一品で立派な食事に。お味噌汁は、出汁入りの味噌をお湯で溶いてお麩を浮かべるだけでもOK。

仕事の多忙度に加えて、独身、既婚、実家暮らしやひとり暮らし。子どもの有無や配偶者の協力度などで、食事にかけられる時間の事情がいろいろと変わってきます。いずれにせよ、必要以上に頑張りすぎずに「食べる」ことを大切に。そんな生き方は、きっと長い人生そのものを支えてくれるように感じるのです。

執筆者プロフィール
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FILAGE(フィラージュ)代表。 書評家/絵本作家/ブックコーディネーター。女性のキャリア・ライフスタイルを中心とした書評と絵本の執筆、選書を行っている。「働く女性のための選書サービス」 “季節の本屋さん”を運営中。twitterInstagramも更新中。