【連載】今夜は、ほろ苦いカフェオレと。 ―第3回―「変化する季節との向き合い方」

【連載】今夜は、ほろ苦いカフェオレと。 ―第3回―「変化する季節との向き合い方」

2020年3月31日
ナカセコ エミコ

第3回 「変化する季節との向き合い方」 毎日頑張って働いているけれど、これで本当に良いのだろうかと迷ったり苦しくなったり。どんな人にも、そんな夜があるものです。 ほろ苦いカフェオレを淹れたら、心を少し緩めてみて。あなたらしい明日を迎えるために、今夜はちょっと立ち止まってみませんか? 書評家・絵本作家のナカセコエミコがお送りする、眠れない夜に読みたいエッセイです。


思ったようには動きづらい世情ですが、転勤や異動、または退職して新しいことを始めたり……。この時期に、何らかの転機を向かえる人はいるのではないでしょうか。

私はこの季節になると、いつもと違うざわざわとしたオフィスの空気を思い出すことがあります。 今回は、異動や退職などに伴う、変化する季節との向き合い方について、少しお話してみたいと思います。

■まず、整理整頓を始める

私自身はというと、転職の経験もありますが、一社に10年以上在籍していたため、異動の記憶の方がいろいろと蘇ってきます。

ある異動の際は、上司からの内示が先にあったため、私は周囲に気づかれないように整理整頓を始めました。勤務するオフィスの場所が変わる場合は、荷物を仕分けしたり、引継ぎ資料を作ったりと、しなくてはならない作業が山のようにあります。異動が公になってからでは間に合わないため、少しずつ作業を進めたことを思い出します。

前から行きたかった部署への異動もあれば、少し不本意であることも……。異動には、誰しも悲喜交々のドラマがあることでしょう。いずれにせよ、私の場合はまず整理整頓からスタート。不思議なもので、手を動かしているうちに、次に向けた覚悟が少しずつ固まってくるものです。

滞りなくその場を離れることができるように、実務的な準備を淡々と進める。すると、皆に知らされるころには、案外と落ち着いていられるものです。

■最善の旅立ちに向けて気持ちの良い態度で

同僚が異動になった場合には、皆さんはどうしていますか。仲が良い人や頼りにしていた人が同じ部署からいなくなることは、やはり寂しいものです。

いろいろなパターンがありますが、若くして地方に転勤になる場合は、「いつ本社に戻って来られるのだろう」と、本人は不安になるでしょう。今までとは畑違いの部署に異動になる場合も、少なからず同じことがいえそうです。

腫れ物に触るようにするでもなく、妙に話題にして騒ぎ立てるでもなく。静かに、いつもと同じようにそこにいることが、身近にいて送り出す者の役割ではないかと思います。

当の本人は、気持ちの処理で精一杯であることが往々にしてあります。望んでもいないアドバイスをしてみたり、不用意な感想を言ってみたりする必要はない。その人にとって最善の旅立ちができるように、残る者は気持ちの良い態度でいることが大切ではないかと思うのです。

■すべての時間が良い記憶になるように

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たとえ別々の場所に進むことになっても、長い人生の中で、これからもどこかで繋がっている。

部署が変わっても会社が変わっても、長く付き合いが続いたり。たとえ二度と会わなくても、時々思い出す記憶に残る人っているものです。

ある時間を一緒に仕事をした記憶と、別れ際の記憶。その時間がセットで、互いにとって良いものになるように。

変化する季節は、自分にも他人にも丁寧に向き合いながら過ごしていきたいものです。

執筆者プロフィール
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FILAGE(フィラージュ)代表。 書評家/絵本作家/ブックコーディネーター。女性のキャリア・ライフスタイルを中心とした書評と絵本の執筆、選書を行っている。「働く女性のための選書サービス」 “季節の本屋さん”を運営中。twitterInstagramも更新中。