【連載】今夜は、ほろ苦いカフェオレと。 ―第5回―「完璧を目指さず、おろそかにしない家事」

【連載】今夜は、ほろ苦いカフェオレと。 ―第5回―「完璧を目指さず、おろそかにしない家事」

2020年5月30日
ナカセコ エミコ

第5回 「完璧を目指さず、おろそかにしない家事」 毎日頑張って働いているけれど、これで本当に良いのだろうかと迷ったり苦しくなったり。どんな人にも、そんな夜があるものです。 ほろ苦いカフェオレを淹れたら、心を少し緩めてみて。あなたらしい明日を迎えるために、今夜はちょっと立ち止まってみませんか? 書評家・絵本作家のナカセコエミコがお送りする、眠れない夜に読みたいエッセイです。


今までになく、Stayhomeで家事と向き合う日々を過ごした人が多いのかもしれません。言うまでもなく、生活していくうえで家事は大事な営みのひとつです。

必要だけれど、地味で褒められない毎日の家事の数々。今回は、仕事をしながら、なくなることがない家事とどう向き合っていくのか。かつての日々を振り返りながら、お話ししようと思います。

■家事の中で得意・不得意分野を知る

少し前に、『逃げるは恥だが役に立つ』というドラマが大ヒットしました。家事の時間を時給換算したらどうなのかなど、さまざまな話題で盛り上がりました。性別問わず、結婚していてもしていなくても、子どもがいてもいなくても、毎日の家事は日々ついてまわります。

しかし、一口に家事といっても、掃除、洗濯、炊事、日々のお手入れ、買い物など、作業の種類は実に多岐にわたっています。たとえば、冬物と夏物の入れ替えといった細かいことまで含めると、家事の中で得意なことと不得意なこと、いろいろあって当然です。

好きなことは、大変であってもそれなりに楽しんでできるものです。ところが、苦手なことは負担倍増。

まずは、自分はどの家事が得意で、逆に不得意なのか。または、何が好きで何が嫌いなのか。効率化を図るうえで、自分の傾向を知ることが大事だと思うのです。

■できなくても罪悪感を持たない

仕事をしていると、時間の都合上、どうしても家事の中で省かなくてはならないことが出てきます。不思議なもので、仕事のクセというものは、余すことなく家事の中にも出てきます。

自分一人で完璧にこなしたかった20代の私は、仕事で遅くなり夜中に自宅に帰ると睡眠時間を削って、鬼の形相で掃除や洗濯、料理をしていたものです。「ちょっとくらい散らかっていてもいいから、早く寝たら。」と、当時、夫はよく言いましたが、聞く耳持たず。とにかく、一人でやらなければならないと思い込んでいました。

けれども、力技でどんなに頑張っても手が回らなかったり、疲れ果てて手がつけられない。そんなときは、「自分はダメだ」と、心の中でよく落ち込んでいました。

今にして思えば、そんなに完璧を目指す必要なかったし、罪悪感を持たなくてよかったんじゃないかと感じます。それよりも、もう少し仕組みそのものを考え直す必要があったのかもしれません。

■家事のアップデートをし続ける

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ラクする方法も、考えてみよう。

少し前に、「名もなき家事」と言う言葉が注目されました。たとえば、ゴミを捨てる前に家中のゴミを集める作業など。人が生活していくうえでしなくてはならない細かい家事は、驚くほどあるものです。

たとえば、時にはプロの手や誰かの手を躊躇なく借りる。効率化を図るために、使いやすくて好きな道具を入手する。そもそも、その家事はしなくてもいいのかもしれません。

どうしたら解決できるのか、いい意味でできるだけラクする方法を考えて試していく。同じ人間がすることですから、ある意味では、仕事にも通じることでしょう。

限られた時間の中で、とにかく便利に、省けることは徹底的に省いてアップデートし続けていく。一人で生きていくとしても、誰かと家族として暮らしていくとしても、家事と仕事は人生において二にして一つ。

完璧を目指すのではなく、かといっておろそかにするのでもなく。自分が心地よく生きていくうえで、工夫し続けていくことは大事なことだと思うのです。

執筆者プロフィール
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FILAGE(フィラージュ)代表。 書評家/絵本作家/ブックコーディネーター。女性のキャリア・ライフスタイルを中心とした書評と絵本の執筆、選書を行っている。「働く女性のための選書サービス」 “季節の本屋さん”を運営中。twitterInstagramも更新中。