【連載】そんな夜に読みたい絵本 -第2回- 「肩の力をふっと抜きたい夜に。」
2019年6月4日
ナカセコ エミコ
今日も1日働いて、小説1冊、映画1本を見るほどの時間や元気はない。でも、このまま1日が終わるのもなんだかさみしい。そんなあなたへ、短い時間で読むことができて、1日の終わりを少し特別なものにしてくれる絵本をご紹介します。今夜の絵本は、『ねえさんといもうと』です。
第2回 「肩の力をふっと抜きたい夜に。」
今回のテーマは、「肩の力をふっと抜きたい夜に。」です。
部下や後輩の育成って大変ですよね。頑張りすぎて、つい入ってしまった肩の力がふっと抜けるような美しい絵本をご紹介します。
■普及の名作が日本版として登場
シャーロット・ゾロトウ文/酒井駒子絵・訳の絵本『ねえさんといもうと』 は、二人の幼い姉妹が主人公です。
『ねえさんといもうと』は、アメリカ出身の作者ゾロトウと画家アレキサンダーの作品で、1974年に発刊されました。 約40年の時を経て、日本版として酒井駒子の絵で再び刊行されることになったのです。
小さないもうとは、いつもねえさんと一緒。ねえさんもまだ幼い少女なのですが、いもうとの面倒を実に甲斐甲斐しくみています。
■世話を焼きすぎると逆効果なときも
しかし、いもうとはなんだか一人になりたいと思ってしまいます。ねえさんにあれこれと世話を焼かれることに飽き飽きしてしまったからです。
いもうとは、ねえさんがレモネードとクッキーを用意しているうちに、そっと家を抜け出して草原へ。ねえさんが探しに来ますが、草原のどこを探してもいもうとを見つけることができませんでした。
実はねえさんのそばにいるのに、いもうとは草はらの中でじっと隠れていたのです。
やがて、ねえさんは座り込み、しくしくと一人ぼっちで泣き始めました。
いもうとが泣いたときには、いつもねえさんが慰めてくれましたが、今、ねえさんのそばには誰もいません。いもうとは立ち上がって、ねえさんのそばに行き、ねえさんを抱きしめます。
その日から、ねえさんといもうとは、互いに面倒を見るようになったのです。
■いつも完璧でなくてもいい
たとえば職場の部下や後輩。いろいろと面倒を見ているのに、自由にやりたいからと離れていってしまったり。人の育成というものは、ときに切ない気持ちになることもあります。
私たちはいつも完璧でなくてもいいのかもしれません。ねえさんのように、弱いところを正直に見せながら、互いにサポートしあっていけばいい。
幼い姉妹の繊細な心の成長から、もっと肩の力を抜いて人の育成に関わっていく大切さを学ぶことができそうです。
タイトル: ねえさんといもうと
著者: シャーロット・ゾロトウ文/酒井駒子絵・訳
発行: あすなろ書房
定価: 1,300円(税抜)
※書影以外の画像はイメージです。
FILAGE(フィラージュ)代表。 書評家/絵本作家/ブックコーディネーター。女性のキャリア・ライフスタイルを中心とした書評と絵本の執筆、選書を行っている。「働く女性のための選書サービス」 “季節の本屋さん”を運営中。twitterとInstagramも更新中。